令和7年8月4日
就任ご挨拶
日本火薬工業会
会長 豊田 憲太郎
この度、日本火薬工業会の会長を拝命いたしました、カヤク・ジャパン株式会社の豊田でございます。昭和23年の創立から77年という長い期間、業界を支えてこられた先人の道を継承させていただくことに対し、身の引き締まる思いでございます。
さて、産業用火薬類の需要状況は、北海道新幹線関連工事が最終段階に入ったことによる需要減や大型土木工事の終了、さらには建設・土木業界の伸び悩み等を受けた石灰石や砕石分野における生産低調により、増加が見込めておりません。リニア中央新幹線工事が少しずつ動きだしてはおりますが、全体需要を上向かせるほどの大きさにはなっておりません。
令和7年の見込みにつきましては、大きな状況変化がないことから令和6年度実績に対し、爆薬で前年比102.0%(約600トン増)の約27,900トン、電気雷管で前年比101.8%(約9万個増)の約632万個を見込んでおりますが、現時点では昨年並みの製造・販売量で厳しい状況が続いております。
今後も大幅な需要の回復は難しいと言わざるを得ませんが、産業用火薬類は国土強靭化のための土木工事や石灰石等の原材料生産には不可欠で、ひいては国民の生活を支える重要な産業であり、当会としては今後も業界により貢献できるよう努めてまいります。
次に安全についてであります。昨年の産業火薬の製造中事故では、廃棄中のものが1件ございました。今年は、事故は報告されておりませんが、1月に燃焼試験中に圧力異常上昇が生じたことで安全装置が作動し火薬が飛散し下草が燃えるヒヤリハットが報告されております。火薬類製造における保安管理につきまして、日頃の会員各位のご尽力に感謝申し上げるとともに、更なる安全レベルの向上に努めていただければと思います。また、消費中では飛石事故が1件報告されており、年間10件となった昨年よりは減少しておりますが、4件のヒヤリハットが報告されており、引き続き注意や働きかけが必要と思っております。
次に、当会の活動状況ですが、まず、「火薬類取締法令の解説(通称:赤本)」の改訂作業を進めており、令和7年度版として今年度発行予定ですので、ご購入のほどよろしくお願いいたします。合わせて、当会講習のテキストでもある「火薬類製造所における保安管理技術」を16年ぶりに更新すべく改訂作業を進めております。こちらも発刊の折にはご購入の上、保安活動の向上の一助としていただければ幸いです。
また、春と秋に開催しております「製造保安責任者研修会」、保安担当者の育成のための「火薬類の製造と保安に関する講習会」には、会員各位のご理解とご協力をいただいていることに改めて感謝申し上げるとともに、より一層のご活用をお願い申し上げます。
当会を取り巻く環境はめまぐるしく変わっており、更にその速度を増すことも予想されます。当会もそれらに臨機応変に対応し、業界の更なる発展に貢献してまいる所存です。会員各位を始めとして関係の皆様のご指導ならびにご鞭撻をお願いし、就任の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
以 上
昭和15年6月、当時の火薬製造会社13社は、共同出資して日本火薬工業組合を設立した。昭和16年、太平洋戦争に突入し戦時統制が更に進展するにつれ、日本の全産業は統制下に置かれた。終戦後、全産業の統制は解かれそれぞれの産業が独自に自由経済への道を模索し始めた。
戦時統制が強化されるにつれ、昭和17年4月、日本火薬共販株式会社と 日本火薬工業組合は合体して日本火薬統制株式会社を設立し、資材の確保、製品の販売の両面を取り扱うことになった。更に戦局が進展するにつれ、日本の全産業をより強力な統制下に置かなければならなくなり、化学工業関係全体の統制機関として化学工業統制会が出来、火薬工業はその第三部会火薬部に属し、そこで生産計画、資材の割当て及び製品の配給割当てを行うようになった。そして昭和19年3月、統制会社令に基づく統制会社となり、社長も化学工業統制会第三部長が兼務して終戦に至った。
日本火薬統制株式会社は昭和20年末GHQに対して、日本の産業火薬類生産再開に関する陳情書を提出する等終戦後の火薬業界のため極めて重要な活動をした。その後も火薬統制会社は業界を代表してGHQとの折衝に当たり、火薬類の生産割当て等の仕事をし、火薬産業が終戦後の混乱からいち早く立ち上がることが出来るよう努力した。
昭和21年9月、日本火薬統制株式会社は、他の統制会社と同様にGHQから解散を命ぜられたので、日本火薬販売株式会社を設立して販売面の仕事を、日本火薬工業組合を設立して資材の割当申請等をすることとなった。この頃は制度の変更が激しく、昭和22年3月、日本火薬販売株式会社は閉鎖機関となり、続いて火薬類は指定生産資材に指定されたので、日本火薬工業組合も昭和22年7月に解散して、火薬類の受給割当、資財の割当は商工省の化成課が行うことになった。しかし、仕事の実務面は、火薬製造会社が昭和22年4月に設立した火薬懇話会がこれに協力した。ところがこのような会が配給業務等に携わることは、独占禁止法上問題があるとのことで、昭和23年4月に火薬懇話会も自粛解散しなければならなくなったので、これに代わるものとして昭和23年5月火薬業界は事業者団体令に基づいて日本産業火薬会を設立した。
平成2年5月、日本に於ける火薬類に関する唯一の事業者団体であることを明確にする趣旨で「日本火薬工業会」と名称を変更した。
日本火薬工業会設立経過 →設立経過説明図
【規約】
日本火薬工業会規約 →規約
【目的】
火薬工業の発達に必要な事項について調査研究し、業界の公正な意見を明らかにすると共に、会員相互の親睦、連絡及び啓発を図り、会員の事業に共通の利益を増進し、本工業の健全なる発展を計ることを目的とする。
【事業内容】
日本火薬工業会機構図 →機構図
日本火薬工業会略年表 →略年表 [昭和23年(1948年)~令和6年(2024年) 8月]
経済産業省(旧通商産業省)主催の火薬類保安技術実験年表→保安技術実験年表[昭和30年(1955年)~令和5年(2023年)]
春季火薬類製造保安責任者研修会見学会開催場所→見学会開催場所[平成13年(2001年~令和7年(2025年)]
火薬工業技術奨励会の発足から解散まで →資料