日本における火薬産業は、当火薬工業会の前進である「日本産業火薬会」が設立された昭和23年頃は、産業爆薬として膠質ダイナマイトが主流であったが、昭和40年頃より安全で且つ安価な硝安油剤爆薬が使用され始め、加速度的に需要が伸び、昭和43年頃には、硝安油剤爆薬が産業爆薬の需要の50%を占めるようになった。
そして昭和50年前後になると、威力も強く、より安全な爆薬である「含水爆薬」が使われるようになり、製造業者も増加し、一方、防衛産業の拡大もあり、火薬類を取り扱う事業者が増大してきた。
こうした時代の変遷もあって、当火薬工業会は産業用爆薬に限らず、火薬類の製造に関する幅広い保安対策等に積極的に取り組んできた。
産業火薬類は戦後の日本経済復興の原動力としての石炭採掘や、鉄、銅、鉛、亜鉛等の鉱物資源,水資源,電源などの開発、また高速道路、新幹線、空港、等の建設と言った産業開発のための重要な基礎資材として、日本経済の発展に大きな役割を果たしてきた。
しかし、これからの産業火薬類の需要環境を考えると、今後とも社会資本整備は続くであろうが、従来型の公共投資(大型土木工事など)は財政問題や自然環境問題から、その実施は制約を受けざるを得ないであろう。
したがって今後、産業火薬類の需要増を期待することは今のままでは難しい状況にある。
工事そのものも変化しており、山岳地より都市型工事にウエイトが推移している現状にあり、産業火薬の需要喚起に歯止めがかかりやすい環境にある。
発破工法における安全・環境問題に対する技術的提案を積極的に行い、広く理解を求めて行くことの重要性が見直されている。
こうした厳しい環境のなかで、生産・物流合理化によるコストダウンおよび、火薬類の用途開発などによる需要喚起に取り組むと同時に、火薬類という危険物に携わる者として自己責任を原則とした自主保安の推進による保安と治安(盗難防止や不正使用防止)の確保、そして保安技術の伝承に一層の徹底を図るなか、国際的にも対応できる体質・体制への変革を果たしていかねばならない。
火薬類から離れた異分野の中での用途技術開発にも目を向けていく事により、業界として共通の利益増進の為、また社会の為に如何に役立つ事が出来るかが業界共通の課題である。
なお、一般爆薬のダイナマイトの国内生産は平成28年3月ですべて終了した。
最近における産業用爆薬の品種別生産量比率は硝安油剤爆薬約77%、含水爆薬約22%、一般爆薬約1%である。